コップの中の水を一瞬に消したり、相手が選ぶカードを予言したりと本格的な手品が得意。脳性麻痺のため筋肉が硬直し、多少のぎこちなさはあるが、それをコミカルな動きに見せることで笑いを誘う。
少しずつ評判を呼び、講演依頼が増えた。「緊張するけど拍手を受けた時は最高」な気分になった。母校である小学校で初めてのショーをした時のこと、聴衆で
ある3年生の80人に僕は自分の生い立ちから話し始めた。そして机に紙コップを置き、ペットボトルの水を注いだ。そのコップを持とうとすると、手が「ガタ
ガタ」と震え、勢い余った水が周囲に飛び散った。---僕は、取っ手のないコップを持とうとすると緊張が走って、動かなくなります。手足に10kgずつの
重りを着けて、紙コップを持つようなものなんです。紙コップを持つ時は軽いタッチで握り、重い物は筋肉を緊張させて持つ。誰でも何気なくやっている事が僕
には至難の業なんです。---僕は、「かわいそう」と言われるけど、かわいそうってナニ?生まれた時からこうだから、僕にはこれが普通なんだよ。
障害者の思いを直接伝
えられる機会を大切にしたいと考え、依頼される講演会には出来るだけ応じる。音楽や手品を披露することもコミュニケーションの一環と考える。「僕らの日常
の姿や考えと、健常者が持つイメージ」との違いに気づいてもらい、共生社会を築いていくきっかけになればと思う。身体障害者に対しても「家の中にいて、バ
リアフリー社会にしろと訴えて、良くなるだろうか?」と、行動を呼びかけている。夢は、本場のラスベガスの舞台に立つ事。「不可能を可能にするのがマジッ
ク」だから、簡単にはあきらめない。
現在、学校からの招待で、障害についての講演とマジックショーの2部構成で活動は月に3~4本。収入は月収で障害者年金などを含め約15万円。講演会の活動は仕事とはいえ学校や施設が多く、収入は交通費として支給される事が多いので遠方からの依頼では赤字になることもありました。
僕
は身体が動く限り多くの人々に笑いを提供して、また勇気や思いやりを感じあえるような講演をたくさんしていきたいです。しかし、実情は生活費や移動用車の
ローンで大半が消える。ハッキリ言って生活は苦しいです。だが、講演のマネジメント会社を立ち上げてくれた人、ショーを手伝ってくれた友人やボランティア
の皆さん、そんな人たちのおかげで夢が追える。売り上げ目標は75万円。多くのボランティアたちに給料を払いたい。善意に支えられ続けるのは精神的につら
いから。「私は森裕生のボランティアです。」ではなく「私は森裕生のアシスタントです。」と胸を張って言ってもらいたい。また言わせる自分でありたいと思
う。

